日産自動車の経営危機について、その背景と現状のまとめ。
経営危機の主な要因
- 米国市場での苦戦
- インセンティブ(値引き)の濫用により、ブランド価値と収益性が低下しました。
- ハイブリッド車(HV)ラインナップの不在が販売不振の一因となっています。
- 販売台数重視の戦略
- 新興国市場での販売台数を追求するあまり、生産拠点への過剰投資を行いました。
- 新型車開発への投資が軽視され、魅力的な車種が不足しています。
- 技術偏重の姿勢
- 「技術の日産」として高い技術力を持つものの、市場ニーズに合わせた製品開発が不十分でした。
- グローバル戦略の不備
- 地域ごとの顧客ニーズに対応した営業戦略が不足していました。
現在の経営状況
- 業績悪化
- 2020年3月期決算では、リーマン・ショック以来11年ぶりの赤字に転落しました。
- 2024年度第1四半期(4~6月期)の連結営業利益は前年同期比99%減の39億円となりました。
- 株価の低迷
- 経営不振を反映し、株価は低迷を続けています。
- 具体的な株価の数値は提供された情報には含まれていませんが、業績悪化に伴い下落傾向にあると推測されます。
- リストラ策の実施
- 「事業構造改革(リカバリープラン)」と呼ばれる大規模なリストラ策を実施中です。
- これは1999年の「日産リバイバルプラン」以来の大規模なリストラとなっています。
「NISSAN NEXT」は日産自動車の4年間(2020年度から2023年度まで)の事業構造改革計画
1. 事業規模の最適化
- 生産能力の削減:
- グローバルの生産能力を約710万台から約540万台(フル稼働時600万台)に約20%削減。
- 工場の稼働率を向上させる。
- 商品ラインアップの合理化:
- グローバルモデル数を69から55以下に削減。
- 固定費の削減:
- 当初計画の3,000億円を上回る3,500億円の固定費削減を達成。
2. 選択と集中
- コアマーケットへの集中:
- 日本、中国、北米(メキシコを含む)をメイン市場として注力。
- 南米、ASEAN、欧州ではアライアンスを活用。
- 重点商品分野:
- Cセグメント(中型車)、Dセグメント(大型車)、電気自動車、スポーツカーに注力。
- 18ヶ月で12以上の新型車を投入。
- 技術開発の重点化:
- 電動化技術、自動運転技術(プロパイロット)、コネクテッド技術に集中投資。
3. 電動化戦略
- 電動車販売目標:
- 2023年度までに100万台以上の電動系車両を販売。
- 2026年度までに電動車のモデルミックスをグローバルで40%以上に向上。
- 新技術開発:
- 低コストでコバルトフリーのリチウムイオンバッテリーの開発。
- 全固体電池の研究開発と2024年度までのパイロット生産ライン設置。
4. 地域戦略
- 工場再編:
- インドネシア工場の閉鎖。
- スペイン・バルセロナ工場の閉鎖に向けた協議開始。
- 英国サンダーランド工場の維持。
- EV生産拠点の拡大:
- 英国のEV生産ハブ「EV36Zero」のコンセプトを日本、中国、米国へ拡大。
- 米国キャントン工場で2車種の新型EVを生産。
5. 自動運転技術の展開
- 2023年度末までに20の国と地域で20以上の車種にプロパイロットを搭載。
- 年間販売150万台以上を目指す。
この計画により、日産は2023年度末に営業利益率5%、グローバルマーケットシェア6%レベルの達成を目指しています。
今後の課題
- 製品ラインナップの刷新
- 魅力的な新型車の開発と投入が急務です。
- 米国市場戦略の見直し
- インセンティブ政策の適正化とHV車種の導入が必要です。
- グローバル戦略の再構築
- 各地域のニーズに合わせた製品開発と販売戦略の策定が求められます。
- ブランド価値の回復
- 過度な値引き販売を抑制し、ブランドイメージの向上を図る必要があります。
日産自動車は、かつてのゴーン体制下での「V字回復」のような劇的な改善を目指していますが、現在の自動車業界を取り巻く環境はより厳しくなっています。電動化やコネクテッド技術への対応など、新たな課題にも直面しており、経営陣の手腕が問われています。
今までの日産の歴史と歴代の車:時系列ガイド
目次
セクション | 説明 |
---|---|
1.日産の創業と初期の歴史 (1910年代〜1930年代) | 日産の起源と初期の成り立ち、ダット自動車の創業について解説 |
2.ダットサン誕生 (1930年代) | ダットサンブランドの由来と初期のモデル紹介 |
3.勝利の復興と日産の成長 (1940年代〜1950年代) | 反省の復興期における日産の再建と国内市場向けモデルの開発 |
4.ブルーバード・スカイラインの誕生 (1960年代) | 日本国内での人気を博した「ブルーバード」と「スカイライン」の開発 |
5.世界進出と日産のグローバル戦略(1970年代) | アメリカ市場への普及や「フェアレディZ」などのスポーツモデルの人気 |
6.シルビア・サニー・サーパルの登場 (1980年代) | 新しいモデルの登場とその特徴について解説 |
7.インフィニティブランドと高級車市場(1980年代後半) | 高級車ブランド「インフィニティ」の設立と背景 |
8. GT-Rの登場とスポーツカーの新時代 (1989年) | GT-Rの登場とその技術の特徴、レースでの成功 |
9.日産の経営危機とルノーとの提携(1990年代後半) | 経営に難があった日産とルノーとの提携について解説 |
10.カルロス・ゴーンのリーダーシップ (2000年代) | 日産の再構築を指揮したカルロス・ゴーンの役割とその影響 |
11.リーフと電動車革命 (2010年代) | 電動車「リーフ」の誕生と電動モビリティへの取り組み |
12.次世代の安全技術と自動運転 (2010年代後半) | プロパイロットなどの次世代安全技術と日産の自動運転への挑戦 |
13.新時代のSUVとエクストレイル (2020年代) | エクスやトレイルキックスなどのSUVモデルの人気と特徴 |
14.最近のモデルとブランド戦略(2020年代) | 最新の車種や、日産のブランド戦略の現状 |
15.未来に向けたビジョン:カーボンニュートラル (2030年に向けて) | 日産の2030年に向けたカーボンニュートラル目標と新技術 |
1. 日産の創業と初期の歴史 (1910年代〜1930年代)
日産の歴史は1911年に創業した「快進社」が源流とされています。この会社が製造した「ダット自動車」が、日産の最初の車種になります。設立され、ダット自動車をベースに新しいモデルの製造を開始しました。
2. ダットサン誕生 (1930年代)
日産は1930年代に「ダットサン」ブランドを立ち上げ、軽自動車市場に参入しました。ダットサンは耐久性とコストパフォーマンスに優れ、日本市場で急速に人気を獲得しました。
3. 戦後の復興と日産の成長 (1940年代〜1950年代)
この時期には「オースチンA50」など、イギリス車のライセンス生産が行われ、日本国内での販売と技術力の向上に貢献しました。
4. ブルーバード・スカイラインの誕生 (1960年代)
1960年代には、名車「ブルーバード」と「スカイライン」が登場し、全国で大きな人気を博しました。 特にスカイラインはその後、スポーツカーとしての高い評価を得るきっかけとなりました。
5. 世界普及と日産のグローバル戦略(1970年代)
1970年代、日産はアメリカ市場に本格普及し、ダットサンブランドで「フェアレディZ」を中心にスポーツカーのニーズを探りました。また、燃費の高い車を提供することで、オイルショック後の市場での自信を確立しました。
6. シルビア・サニー・パルサーの登場 (1980年代)
1980年代には、「シルビア」「サニー」「パルサー」など、様々な窓口に対応するモデルが投入され、広範囲でニーズに幅広く対応しました。
7. インフィニティブランドと高級車市場(1980年代後半)
1989年、日産は高級車ブランド「インフィニティ」を立ち上げ、高級車市場に参入しました。アメリカ市場での高級セダンやSUVのニーズに応えるため、特に北米市場向けの品揃えを強化しました。
8. GT-Rの登場とスポーツカーの新時代 (1989年)
1989年に登場した「GT-R」は、最先端の技術を搭載し、性能面で国際的に高く評価されました。GT-Rはその後も進化を続け、日産を象徴するスポーツカーとして愛されています。
9. 日産の経営危機とルノーとの提携(1990年代後半)
1990年代後半、日産は経営難に負けて、フランスのルノーとの資本提携を行いました。この提携によって日産は経営の立て直しを図り、再び成長の歩みに進むことができました。
10. カルロス・ゴーンのリーダーシップ (2000年代)
カルロス・ゴーンが日産のCEOとして経営改革を行い、コスト削減や新製品の投入を念頭に日産の再構築を進めました。
11. リーフと電動車革命 (2010年代)
2010年に発売された「リーフ」は、世界初の量産型電動車として注目を集め、日産は電動モビリティ分野でのリーダーシップを確立しました。リーフはその後も進化を続け、世界中で多くのサポートを獲得しました貰っています。
12. 次世代の安全技術と自動運転 (2010年代後半)
2010年代後半には「プロパイロット」などの自動運転支援技術が導入され、運転支援システムの充実により、安心・安全なドライブが実現しました。
13. 新時代のSUVとエクストレイル (2020年代)
2020年代には「エクストレイル」や「キックス」といったSUVが人気を集め、ファミリー層を中心にサポートされています。これらのモデルは先進的な安全技術と環境性能を大切にしています。
14.最近のモデルとブランド戦略(2020年代)
2020年代の日産は、最新の電動車とSUVの選択肢を考え、持続可能なモビリティを社会に向けたブランド戦略を展開しています。
15. 未来に向けたビジョン:カーボンニュートラル (2030年に向けて)
日産は2030年までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、次世代の電動車と新しいモビリティサービスの導入を計画しています。これにより、環境に優しい持続可能な未来を目指しています。
スカイラインGTRなど様々なスポーツカー、大衆向けの電気自動車リーフを産み出し、時代の先駆けを行く車会社ですが、 国内海外と売上が低迷し経営課題が山積み。今後の業績回復に期待しております。