Scope3削減を進めるため、バイオマスPPやPEへの切り替えを検討している。しかし、本当にコストに見合うのか?
「Scope3削減を進めるため、バイオマスPPやPEへの切り替えを検討している。しかし、本当にコストに見合うのか?」
化学メーカーの調達・購買担当者やGX推進部門では、今この課題に直面している企業が増えています。
バイオナフサ(バイオマスナフサ)は、脱炭素や環境価値の観点から注目を集めています。しかし現場では次のような課題が導入の壁になっています。
- 石油由来ナフサとの価格差はどの程度か
- 安定調達できるのか
- 品質面に問題はないのか
- 社内説明できるだけの根拠があるのか
特に厄介なのは「製品性能の問題」ではなく、コストや供給網、認証運用といったサプライチェーン全体の問題です。
この記事では、バイオナフサ導入時に避けて通れないコスト上昇(グリーンプレミアム)の実態から、供給リスク、認証制度、マスバランス方式の課題まで実務視点で整理します。
バイオナフサ最大の見えない壁「コスト(価格)」の現実
石油由来ナフサとの圧倒的な価格差(グリーンプレミアム)
バイオナフサ最大の障壁は価格です。
従来ナフサは原油価格に連動しますが、バイオナフサは原料確保・回収・認証・物流など複数コストが加算されます。
購買現場ではこの追加コストを「グリーンプレミアム」と呼ぶことがあります。
| 項目 | 石油由来ナフサ | バイオナフサ |
|---|---|---|
| 原料 | 原油 | 廃食油・植物油等 |
| 価格変動 | 原油市況中心 | 原油+需給競争 |
| 供給量 | 安定 | 限定的 |
| 認証費用 | 不要 | 必要 |
| 物流 | 成熟 | 未成熟 |
実務上は数%程度ではなく、条件によっては大きなプレミアムが発生するケースもあります。
製造・輸送プロセスにおけるコストの上乗せ要因
価格上昇は原料そのものだけではありません。
特に見落とされやすいのが物流コストです。
主なコスト上昇要因
- 廃食油回収ネットワーク整備
- 海外原料輸入費
- 小ロット輸送
- 保管設備対応
- トレーサビリティ管理
既存石油サプライチェーンは数十年かけて最適化されています。一方でバイオナフサ供給網はまだ発展途上です。
つまり問題は「材料費」だけではなく、「システム全体の未成熟」にあります。
コストだけではない!バイオナフサの4つのデメリットとリスク
1.供給量の圧倒的不足と調達の不安定さ
現在、世界では廃食油(UCO)の争奪戦が起きています。
最大要因はSAF(持続可能航空燃料)の急拡大です。
注意ポイント
化学業界は燃料用途より価格競争力が低く、需給ひっ迫時には割り当て制限リスクがあります。
2.原料調達における環境・倫理的トレードオフ
「植物由来=完全に環境に優しい」とは限りません。
代表例がパーム油問題です。
- 森林破壊
- 生態系破壊
- 食料との競合
- 人権問題
環境価値を訴求するほど、原料背景の説明責任も重要になります。
3.マスバランス方式への理解不足
最大の営業課題がここです。
バイオナフサではマスバランス方式が利用されます。
マスバランス方式とは
投入したバイオ原料比率を計算上、製品へ割り当てる仕組みです。
顧客側では「実際に製品に入っているのか?」という疑問が発生しやすく、営業や企画部門の説明負荷が高くなります。
4.認証取得と管理コスト
導入後も運用負荷は続きます。
- 監査対応
- サプライチェーン管理
- 台帳整備
- ライセンス費用
- 社内教育
「導入はできたが運用が続かない」というケースも少なくありません。
バイオナフサのコスト・調達デメリットを乗り越える方法
環境価値を製品価格へ転嫁する
すべてを自社で吸収するのは現実的ではありません。
重要なのは環境価値の可視化です。
- Scope3削減率
- CO2削減量
- カーボンフットプリント
- ESG効果
価格ではなく環境価値を販売する考え方が必要です。
調達先の複数化と長期契約
供給不足時代では調達戦略そのものが重要になります。
有効な対策
- 国内外マルチソース化
- 商社連携
- 長期引取契約
- 数年単位契約
まとめ
バイオナフサは「高い」「足りない」という明確な課題があります。
しかし脱炭素社会では避けて通れない素材でもあります。
重要なのは価格だけを見ることではありません。
「価格上昇をどう説明し、どう価値化するか」が重要です。
導入判断では材料単価だけではなく、「調達・認証・供給網」まで含めた全体設計で考えることが必要です。
よくある質問(FAQ)
バイオナフサとバイオマスプラスチックの違いは?
バイオナフサは原料、バイオマスプラスチックは最終製品を指します。
バイオナフサはなぜ高いのですか?
原料回収・認証・物流・供給不足など複数コストが加算されるためです。
マスバランス方式は本当に環境配慮ですか?
国際認証制度のもと管理されており、サプライチェーン全体の脱炭素促進策として採用されています。

